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ゆきのゆき、はるのしずく

しあわせのかたち
~雪の幸・春の雫~


―プロローグ


「―ねぇお母さん。しあわせってなぁに?」
「しあわせ・・・んー、そうねぇ、一人一人違うもの、かな。」
「ちがう?」
「うん、だから、ゆきはゆきの、お母さんとは違ったしあわせがあるの、だから、お母さんはゆきのしあわせは解らないな。」
「そっかぁ・・・じゃぁ!おかあさんのしあわせってなぁに?」
「お母さんは・・・もうしあわせよ。」
「・・・いま?」
「うん、今。」

なんて事は無い、ふとした子供の疑問。
それに微笑み答える母親、どこにでもあるような風景。

「だって。大好きな人と一緒に居られて、あなたという子を産めたんだもの。」

母親は、優しく子供の頭を撫でてそう言った。
当たり前のようにある風景。
それが『幸せ』だと、母親は言ったのだ。

「そっかー?」
「ええ、しあわせ。」
「しあわせ。」

対して、子供はよくわかってなさそうだった。
当然だ、俺は思った。
どう答えたって、反応は一緒だから。

しあわせなんて。俺にさえわからないのに。こんな子供にわかるわけないだろう。
だが、それを俺が二人に対し口を出す事は無い。
夢に文句を言いに行くなんて出来やしないし、したくも無い。
何より、自分に話しかけるなんて、何とも不思議な話だろう?

そう、俺はあの親子を知っている。
まだ幼かった自分と。
若くしてこの世を去った、母親。

そしてしばらくして夢から覚めた。

・・・最後に見たのは、母親の最期の笑顔だった。

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ゆきのゆき、はるのしずく

序章『日常』 1/5

「・・・ああ・・・眠い。」

いつも目覚めが悪い俺だが。今日の目覚めは最悪だった。
間違いなく、あの夢のせいだろう。
まったく・・・後味の悪いものを見せられた。
途中で終わってくれれば何と良かった事か。
しかし、起きてしまったモノは仕方ない。
俺はベットから降りて、顔を洗うべく、洗面台へと向かった。

「・・・ああ、眠い。」

洗面台の冷たい水は、俺の一日の始まりを告げてくれる、筈なのだが、目はまだ覚めないらしい。
鏡に映る自分の顔は、俺の意識同様、まだまだ夢の中だった。

ああ、いっそのこと学校など忘れて眠ってしまいたい・・・。
朝の学生が度々思う事だろう。
しかし、時間がそうもさせてくれる訳が無く、俺は目がうつろなまま部屋に戻り、ベットを隣に着替える事となった。

とは言え、今日は夏休みを前にした終業式。
つまり、今日行けば明日からは長々とベットで眠れるのだ。
あの小うるさい学校の連中ともしばらくはおさらばできるし。
なんていいんだろう、夏休み。

別段学校が嫌いなワケでは無い。
ただ、そこら辺に居るチンピラの心境が解らなくも無いというのも事実なのだ。
要するに、面倒臭い。
行事やら、勉強やら、とにかく何から何まで面倒臭い。
要するに、俺こと『冬野雪』は、極端な平和主義者(?)なのだ。
何も無いのが一番、平穏が一番。
・・・まぁ、そんな事を言う奴程何かしらに巻き込まれるのが漫画でよくある話なのだが。

高校2年生になったこの夏・・・俺に何かが起きる!
なんてあるわけ無い、ここは現実だ。
確かに、美少女が出てきて不思議な力が使えて、悪の組織と云々。
そんなの、ないほうがいいや。

とにかく、何も無いほうが苦労しない。何も考えずにすむからだ。

何やら妄想の多かった着替えも終わり、制服へ。
ふと、時計の針を見る。
あっと驚き、時刻は12時。
終業式など、とっくに終わっていた。

・・・我ながら反省。

仕方なく登校は諦め、私服に着替えることにした。
そしてこの時、俺はようやく、朝食さえ喰い忘れている事に気づいたのだ。
夢の後とは言え、寝ぼけ過ぎだろう、俺よ。

――

時計は12時30分。もはや朝食とは呼べないものを食べ終え、我が家のテーブルで一人欠伸をする。
何とも複雑な気分だが、もう学校に行く気は無い。
わざわざ怒られに行ってどうすると言う話だ。

とりあえず、昼風呂でも入ろうかな・・・。
良いご身分だ、などと一人思いつつ、食器を台所に置き、水に流し置き、お湯を沸かさんと風呂場へ歩き出す俺。
が、しかし。

―ピンポーン!

まるで謀ったかの様に鳴る呼び鈴。
・・・なんてバットタイミングな。
しかし出ないワケにも行かない。

「はーい、今行きまーす・・・」

面倒臭いと思いつつ、寝ぼけ眼でドアに向かい、そして、扉を開ける。
すると、良く知る少女がそこには居た。

「はーい・・・どなた様ですかー・・・ってなんだ・・・幸か。」
「―むー、なんだとはなによー。なんだとは~」
「俺の清々しい朝を妨害するからだ。」
「どーみても清々しくは見えない・・・というか今お昼だよ?」

ゆきったら寝ぼけすぎ、と笑う少女は、俺と同じ学校の黒を基調とした制服姿、多分終業式帰りだろう。
耳に届く位の黒く短い髪に、丸い瞳で俺を見つめるコイツは『春日部幸』。

言うなれば、俺の彼女に当る女の子である。
俺より年下だが顔つきは子顔美人と言った所、自分で言うのはなんだが、可愛いと思う。
だが性格は天真爛漫で、どこか幼さが残る、このギャップ。
身長が小さいためよく中学生ですか?といってからかってやるのが最近楽しい。

「・・・で、何用だ中学生。」
「むぅ・・・中学生じゃないもんっ!」

そして早速、このやり取り。
効果は抜群らしく、頬を膨らませる。上から見下すその顔はなかなか面白い。
何せ身長差が25cmはあるのだ、軽くトマトを摘み取る畑の人気分である。

「相変わらずその顔面白いな」
故に、俺は思わず笑ってしまった。
「わらうなぁ~~~~!」
膨らんだ顔、頬は更に赤くなっていき。
ペコペコペコ!
幸は怒ったのか、ついには俺の腹をペコペコと叩き始めた。
もちろん。痛くない。
どっちかというとくすぐったいくらいだ。

「あっははは・・・悪い悪い・・・」
「ふーんだ・・・せっかく終業式終わって遊びに着たのに・・・もうあそんでやんないもん!」
「なっ・・・ちょっとまて。」
「またない!」
「まて」
「またない!」
「まて」

しかしながら、どうやら少しやりすぎたようで。
完熟トマトの様に赤くなる幸の顔。
殴られるよりも、こんな顔をされる方が精神的にはよっぽど来る。
このままでは気まずい、俺は即座に謝る。

「ほんとすまん。な?」
「むぅ・・・うー。」
「少し言い過ぎたよ、ごめん。」
「・・・ゆき、最近わたしにいじわるだぁ・・・。」

しかし、頬は膨らんだまま、俺は笑いそうになるがここは堪える。
せっかく来てくれた彼女をこんな些細な事で泣かせては、また悪友に笑われる。

「わ、わかったわかった・・・ファミレスでパフェおごるから。」
「ホント!?」

泣きそうな顔が一転、輝いてる幸の瞳、まるで玩具を買ってもらえるのを喜んでる子供の様である。
搾り出した言葉が、意外にも的中したらしい。
しかしチャンスだ、俺は続ける。

「あ、ああ、ただし1個までな。」
「うんうん、OKOK!チョコパフェチョコパフェ~♪」
「よし、んじゃ。・・ちょっとまってろ。チャリ取って来る。」
「えへへ~、はーい♪」

いつのまにか膨らんだ頬は元に戻り。そこにはうれしそうな幸の笑顔があった。
どうやら機嫌は直ったらしい、良かった。
・・・なんだか謀られた気がしなくも無いが、俺は考えない事にした。
アイツにそんな高度な技術があるとは思えないし。

―――午後1時。

「なぁー幸ー」
「なぁにー」

田舎の道路を自転車が走る。比較的車が少ないため道路を走っても平気だ。
だが風を切る音と車が通る音でお互い少し声が大きくなる。
二人乗りだからそんなに音量上げなくてもいいんだが。無意識に大きくなるのだろう。
まるで叫ぶ様に、お互い他愛の無い会話をしていた。

「・・・幸せってなんだとおもうよー?」

そんな他愛の無い会話の中で、俺は唐突にそんな話題も切り出していた。
夢の所為である事は間違いないが、我ながら馬鹿な質問をしたと思う。

「んー・・・わかんないー」
「そうかぁー。」
「それにさー。幸せって人それぞれだしー。」
「うんー。」
「ゆきとわたしのしあわせも違うとおもうー!」
「だよなぁー。」

そう、幸せなんて、一人一人違う。
俺の幸せも、ゆきの幸せも、多分違う。
つまり、答えと言う答えが無い。
若干心境は複雑だが、多分それが答え。
そもそも、形に見えないのだから、同じかどうかも解らないのだから。

「あはは、今日のゆきは何かへンだっ!」
「うぉっ・・・!?」

そんな俺の心境など知る由も無いだろう、笑いながら俺の背中に思いっきりくっついて来るゆき。
二人乗りであることを忘れては居ないだろうか。
良い子はマネしてはいけない。

「ちょ・・・危ねぇって!」

自転車のバランスがくずれそうになるが。何とか持ち直した。
場所が場所だけに、一歩間違えれば大惨事だ。

「ぇ。嫌だー?」
「・・・い・・・?」
「なんだかんだテレてるんじゃないの~?うりうり~?」

だが、そんな事はお構いなしに、ゆきはまだくっつき続ける。
後ろだから顔は見えないが、きっと顔はまだにやけているに違いない。

「・・・。」
「あははー、素直でよろしい!」

この場面で正直に答えない輩は居まい。
内心照れつつも、俺は素っ気無い声で、そんな返事を返していた。
・・・割と良くある、二人のやり取り。
俺がいじめると拗ねる癖に、俺には意地悪な事を言ったりやったりするゆき。
こんな関係が、もうそれなりに続いている。

「わたしー」
「あー?」
「わたしはゆきとこうして一緒にいられるのがしあわせかもー!」
「・・・そうかいー。」

・・・確かに、こんな日々も悪くない。
最近そう思ってる俺がいる。

他愛の無い会話、日常茶飯事のやり取り。
時々は恋人らしい事もして。

この当たり前の日常が。ずっと続けばいい。
この時俺は、そう思った。

ちなみに、その後俺は、約束通りパフェをおごる事となったのだが。
甘いモノは別腹と言う奴なのだろうか、チョコパフェを3個も食べたゆき。
結果として、慰め料金として2400円と言う高額自腹が俺に降りかかったのだった。

・・・前言撤回。
からかう回数は少なくするとしよう。

――日常:2/5に続く

プロフィール

天野幸音

Author:天野幸音
ようこそ、野良猫の溜まり場へ。
お茶もお洒落な音楽も無いけれど、ちょっと変わった物語がここにはあります。

・・・多分?

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