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季節外れのベロペロネ 

※この物語は本編とは関係あるようでありません、いわゆる作者のきまぐれシリーズです、ご了承ください。


「―・・・おーい、早くしろよ姫子。」
「解ってるわ!これでも急いでんねん!」
「なーにが急いでるだ・・・長ぇよ、もう皆集まってるって桜さんから連絡あったぞ。」
「解ってる!もうちょっと!」

もう何度目か、そのもうちょっとは。
最初の『もうちょっと』を聞いてから早30分、姫子は今だに鏡とにらめっこをしていた。
女の子の準備は時間が掛かるとは良く言うが、これは掛かり過ぎだろうと思う。

いや、これが大それた行事の準備ならまぁ何とか解ってやろうと思うだが、行く先は管理人室。
そして始まるのは、いわゆる忘年会の様なバーベキューパーティー。
親密過ぎるこのアパートだからこそ出来る、恒例行事。
ちなみに、発案者は桜さんである、ここ重要。

・・・何でこのクソ寒い時期にバーベキューなのかって?
そんなの、俺が聞きたい。

季節外れのベロペロネ 番外編。
『最後くらいは普通に?』

「遅いよコータ~!」
「すいません、コイツの準備が手間取ったモンで。」
「・・・だったら先に行けば良かったやん。」
「・・・忘れてたんだよ。」

所変わって、管理人室前(パーティー会場)。
第一声、やってきた俺と姫子を迎えたのは、やっぱりと言うか、桜さん。
飲む前だと言うのに、既に飲んでいる。
何を言っているのか解らないと思うが、事実出来上がっているのだ。

「しっかし・・・今年も此処でやるんですね・・・。」
「人数が人数だし家に入りきらないしねぇ、まぁバーベキューやるんだから、結局外じゃん~?」
「まぁそうですけどね・・・。」

しかも、お解かり頂けただろうか、俺等の現在位置は室内ではなく屋外。
バーベキューの機材や設置型のイス、テーブル、アウトドアな品々で誤魔化していなければ、10分と立っていられない寒さ。
何だかんだ冬の夜空である。
そんな中で彼女はいつもの白シャツにGパン、見慣れたとは言え、やっぱり異様な姿。
加えて平気で風邪を引くから、性質が悪い。

「まぁまぁ座りねぇ、もう直ぐあっちの準備も出来るだろうし、イチャイチャ待とうよ~♪」
「やっぱサボりか!?何かおかしいと思った!」

何より、この状態の桜さんは普段とは比べ物に成らない程役に立たない。
どうりで電話の内容と食い違うワケだ、俺は姫子と顔を合わせ、酔っ払いを一人置き、管理人室へと入っていった。



「あ、コータさんに姫ちゃんいらっしゃ~い。」
「いらっしゃ~いっ。」
「こ、こんばんわ。」
「お、ちわっス。」
「陽菜姉ちゃんに風華姉ちゃん、来てたんっ!」
「うんっ、お久しぶりなのだ~。」
「うんうん、お久しぶりや~。」

予想通り、室内は準備で大忙しだった。
何やらいい香りが漂う台所で、さまざまな音を立てながら調理をするのは、柚子さんに、アパートの住人では無い陽菜さんと風華さん。
まぁ娘とその友人なワケだし、呼ばれても不思議は無いだろう、むしろ去年居なかったのが不思議な位だ。
そこら辺は多分都合が合わなかっただけだろう、聞く事でもないし、俺は勝手にそう解釈した。

「ちーっすコータに姫子。」
「遅いわよコータ、男手が無くて困ってたんだから!」

と、彼女らだけではない、調理スペースが足りないのか、管理人室のテーブルに新聞紙を引いて、野菜だの肉だの、どっちでも無いものだの、バーベキュー用の食材を切る瑞希姉妹の姿もそこにはあった。
・・・アパート外の陽菜さんと風華さんはともかく、この二人が調理する姿を見るのは久しい。
ともかく、まさに女の厨房である。

しかし、外を見る限り機材の準備は出来ているのだし、力仕事の類は無く、梨花の言う男手が必要だったとは思えない。
さてどういうことか、と一応聞こうとした、その時だった。

「―ただいま帰りましたー。」

ああ、そう言う事か。
ドアの開く音と同時に現れた彼と、彼の両手に持つモノに、俺は直ぐ納得した。

「悠君おかえり、おつかれさま~っ。」
誰よりも早く返したのは、やはり陽菜さん。
それもその筈、悠君こと成瀬悠斗君は陽菜さんの彼氏。
お呼ばれしていても不思議では無いし、男手が居なかったとなれば、そういう役回りになるだろう。

・・・ちなみに余談だが、機材の用意をしたのは風華さんだそうな。
そこ、男手要らなかったんじゃ?とか言うなよ。

「一応メモどおりに買って来たつもりですけど、こんなモンでいいっスかね?」
「・・・うんうんっ、ありがとう悠君、悪いわね~。」
「いえいえ、タダで飯食わしてもらうワケだし、コレくらいは・・・っと。」

そう言いながら、玄関で両手に持った物を下ろす成瀬君。
その中身はもはや言うまでも無い、大量のジュースやお酒、紙コップや皿、それらがLLサイズのレジ袋をパンパンにしている。
女子ではコレは持てないだろう。
梨花の訴える様な視線を感じ、申し訳ない気持ちになりつつも、俺はそれとなくその荷物を持ち、陽菜さん達との雑談に華を咲かせる姫子を置いて、冷蔵庫へと向かった。

「―あら、コータ今来たの?」
「うぉあ!?」

約5秒後、目の前にあった冷蔵庫の前に足を着けたタイミングで、突然、どこからか声が聞こえた。
それ故に驚きを隠せず、俺と姫子は思わず声を上げる。

「こっちよ、こっち。」

しかし、それも一度きり。
そう振り向かせようとする声の主が誰であるかを、俺は直ぐに理解した。
ついでに、彼女がどこに居るのかも。

「・・・静花さん・・・何やってるんスか・・・?」

・・・そう俺が問うのも無理は無い。
何せ俺の目に映る彼女は、手伝う気など微塵も無いのだから。
いや、俺も遅れて来たのだから人の事は言えないが、これから手伝おうとしている分、この人よりはマシだと思う。

「何って、見ての通りコタツの中で本を読んでるんだけど?」
「・・・あー。」

ええ、そりゃ解ってますよ。
貴女が人の家のコタツから顔だけを覗かせて、ぬくぬく寝転がりながら本を読んでるのは言われなくても解ります。
問題はそれをどうして今やっているのか、と言う話でして。

「だって、あの広さの厨房で8人も動き回ってたら押し競饅頭じゃない。」
「・・・まぁ、そうですけどね。」

俺のツッコみを待つ事も無く、そう答え、再び本のページをめくり始める静花さん。
確かに、5人でいっぱいいっぱいの厨房、マイペースな静花さんが居ても正直な話、邪魔ではある(俺と姫子も同上)
ああ、言ってる事は間違ってない、間違ってないのだが。
・・・その状態で言われると、やはり腑に落ちない。

「―準備が出来ましたよ~。」

が、タイムアップ。
納得させられたまま、俺は一人、配膳の手伝いへと向かった。

――

「それじゃぁ、まだ皆揃っていないのだけれど、お腹も空いたでしょうし、始めちゃいましょうか~。」
「いぇーい!待ってました!肉!酒!酒!」

程無く、配膳は終わり、準備は万端。
一人だけやたらとテンションの高い人に誰もツッコみを入れない辺りが、慣れを感じるこの状況。
まぁ、今日に限っては皆テンションが高いし、多分、可笑しく感じないのかも知れない。
俺も何だかんだ、こういうのが嫌いでは無いんだから。

「・・・今年も色々とお疲れ様でした、また来年も宜しくお願いいたします、では・・・乾杯っ!」

柚子さんの乾杯に、それぞれが酒とジュースの入った紙コップを夜空へと掲げ、口を大きく開けて返した。

「―乾杯っ!!」

今年最後の祭りの始まりだ。

「最初の肉は私が貰う!」
「オレも我慢出来ない・・・いただきまーす!」
「私も・・・手伝いお腹が空いちゃったー。」
「はい、どうぞ~。」

開始早々、串を手に取ったのは、やっぱりと言うか桜さん。
待ちきれんと言わんばかりに手に取ったそれを、大きな口で頬張る。
それに続く様に、瑠花、梨花と串を取り、ばくり。
よほどお腹が空いていたのだろう、女子らしからぬ豪快さである。
まぁ、見慣れたモノであるが。

「うんまぁ~・・・やっぱ柚子さんの料理は最高~・・・!」
「ふふっ、桜ちゃんは相変わらず美味しそうに食べるわね~。」

そして、この幸せそうな顔である。
美味くないワケがない、良く焼けた肉に、テカりのあるソースが付いたその姿。
その肉を惹き立てるかの如く並ぶ、さまざまな色の野菜たち。
勿論、彼等も良い色に焼けている、草食系の面影などどこにも無い。

「っ・・・んっ・・・ぷはぁ~・・・この為に生きてるんだよなぁ・・・!」

トドメにビール(500ml)を勢い良く飲み干し、お決まりのセリフ。
オッサン臭っ、と姫子のツッコみが入る、何を今更と。

「・・・野菜も美味しい・・・柚子さん、良ければこのレシピを教えてくれませんか・・・?」
「あらあら、良いですよ~、そんなに喜んでくれるならおばさんも作った甲斐があるわ~。」
「風ちゃん、ひょっとして子供達に作ってあげるの?」
「うん、今度野菜嫌いな子も多いし、これなら喜ぶかなって、もっと小さめなサイズで作って・・・お昼の時間に出せるかなと。」
「なるほど~。」
「貴女、仕事は保母さんなの?」
「あ・・・いえ、バイトの延長みたいなもので、そんな立派なモノじゃないです・・・だから、少しでもお役に立てればと・・・。」
「そう・・・勉強熱心なのね、ウチのコータにも見習わせたい位。」
「あはは・・・。」

それとは全くの正反対、和やかな食事風景。
小さく、ぱくり、もぐもぐと、女の子らしくかじっていく陽菜さんに姫子と、串から外し、皿に乗せ、噛み締め、味わいながら食べる風華さんに静花さん。
本来なら、桜さんの様に一気に食わなければ食べ辛いのがバーベキューの肉なのだが、食べてびっくり、驚くほどに軟らかく、それを可能にしている。
さすがは柚子さん、その手の配慮も忘れない。

・・・って言うか、結構勉強熱心なつもりだけどなぁ。
そう思いつつ、手痛い返しを恐れて言えない俺。

「・・・しかし、改めて見ると凄い量だな・・・食えるのだろうか。」
「・・・だなぁ。」

同じく、そんな右と左で激しく違う絵を見ていた成瀬君が、そんな言葉を漏らす。
確かに、肉、野菜、肉、野菜、と繋がれたこの串が、ざっと見て50本はあるだろう。
勿論それだけではない、ウィンナーやらスペアリブの様な男の子大好きなメニューから、串以外でも酸味のきいたミネストローネにコールスローサラダと、飽きさせないと言わんばかりの種類。
ちょっとした食べ放題状態である、あるが故に、その心配も尤もだった。
男2人に、女6人、子供1人で、コレは食べきれるのか?と。

だが―。

「・・・それは心配無いと思う。」
「柳野。」
「悠・・・結構長い付き合いだと思うんだけど・・・忘れてない?」
「・・・何がだよ?」
「空。」
「・・・ああ・・・。」

彼女の一言に、俺たちはソレが杞憂である事を理解する。
そう、居るのだ。
酒を水の様に飲む桜さんの様な、化物の胃袋を持った人物がもう一人。

「―肉の匂いがするーっ!!」

噂をすればなんとやら、風と共に、彼女は現れた。
・・・なんて格好の良い言い方をしてみたが、台詞の通り、その顔たるや、食いしん坊の顔である。
メシを前に『待て』をされた犬ですか、アンタは。

「空・・・遅いよ。」
「いやーごめんごめん、年末だから色々忙しくてさー。」
「いや、それは電話で聞いたから解ってるけど・・・その両手のレジ袋は何?」
「・・・いやぁ、ほら、メインの後にはデザートが欲しいじゃない?って思ってさ?」

しかし、タダ飯を食うと言う自覚は多分あるのだろう、その両手には手土産のアイス。
このクソ寒いのにアイス?と思うが、まぁ気にしない。
寒い日にアイスを食いたくなるなんてのは、良くある事だ。

「あらあら、わざわざありがとうございますっ、冷凍庫に入れておきますね~。」
「柚子さんの手料理食うのに何も無しじゃねぇ。」
「・・・空が珍しく気を遣ってる・・・。」
「珍しくって何さー、空ちゃんは何時だって気遣いの出来る女さー。」
「・・・気遣い・・・?」
「私はいつだって気遣ってきたじゃない?」
「・・・。」

風華さんの反応もご尤もである、その言葉には俺も反論の意を唱えたい、神埼空による被害の会副会長としては。
・・・いや、実際にそんなモンは無いが、あったとしたら間違いなく会長は風華さんだろう。
いい加減怒っても良いと思う。

「しっかし・・・もぐもぐ・・・弥生に相太君も勿体無い・・・もぐ・・・こんな美味しいお肉を食べれないなんて・・・実家で年越しとは言え・・・もぐもぐ。」
「食べながら喋らないの・・・。」
「だって美味し過ぎて手が止まらないんだもん。」
「ふふっ、嬉しい事言ってくれちゃって~。」

両手が開いた途端、席にも座らず、そそくさと串を手に、即口へと運ぶ空さん。
よほどお腹が空いていたのか、片手に3本、計6本。
いや、俺が6本と数を数えた時点で、既に1本なくなっているから、5本か。

「くぅ・・・お酒が進むねぇ・・・!」

と実況しているうちに4本、3本と、片方完食、ビール缶を飲み干す。
この間、僅か3秒。
宇宙の胃袋も真っ青のブラックホールっぷりである。

「む・・・私も負けてられないな・・・見ててコータ!私もっと飲む!」
「いやいや、そういうのじゃ無いですからこれ!」
「お、いいねぇいいねぇ!楽しくなってきたよっ!」
「空さんも乗らないで!桜さんそういうの大好きだから!」

そんな姿に競争心が芽生えたのか、すばやく串を手に取り、同じく勢い良く口へ運ぶ桜さん。
ソレを見て、まぁ予想通りと言うか、ノリのいい彼女が反応しないはずもなく。

「ほっほう、じゃあ飲み比べで勝負だ!」
「いいよー!食べ比べも忘れずにね!」
「やめて!桜さん最終的に皆に飲ませちゃうから!」

串に酒を互いに構え、臨戦態勢。
これはまずい、間違いなく皆巻き込まれる。
未成年の姫子から酒に弱い柚子さんまで、こぞって巻き込まれて近所迷惑になる。

何とか止められないものか、そう考えていた時のことだった。
「スキありっ!」
「ムゴォ!?」

一瞬で間合いを詰められ、日本酒(瓶)を口にズボリ。
・・・だからこれ、バトル小説じゃないんだって。

「折角だからタッグで勝負よ!こっちはコータで!」
「ごぼごぼ(なんで)!?」
「おう、やったらぁ!カモン成瀬君!!」
「・・・何で俺・・・?」
「相手が男なら、男を出さざるを得ないじゃない!」
「いやいや、その理屈はおか―・・・ムゴォ!?」
「これで条件は対等・・・そうでしょう?」
「いいわ・・・行きましょう!」

一体何が折角なのかは良く解らない、多分ノリだろう。
桜さんが盾の様に俺を前に出すのと同じく、瓶を口にした成瀬君を前に出す空さん。
順調に体内をアルコールが巡っていくのを感じながら、俺は目の前の状況を理解する。
ああ、こりゃもう止まらん。

「レディー?」
「「ゴーッ!!」」

そこからは、本当にお祭り騒ぎ。

周り(一部除く)もテンションを上げていく中、飲んでは食って、飲まされては食わされて、串は減る減る。
おまけに、かくし芸など予定されていない無茶振りをさせられたり、一気飲み対決をさせられたりと。
満面の笑みで快諾する柚子さんの下、周囲をも巻き込んで、近所迷惑ギリギリの盛り上がりとなった。

・・・で、その後どうなったかって?
うん、気付けば朝だったよ、新年だったよ。
それも当然、俺(と成瀬君)はタッグ対決の途中で倒れたのだから。

後に静花さんから聞くには、死屍累々だったそうな。
まぁ、そんな気はしていたよ。

・・・ともかく、お疲れ様去年、こんにちわ、新年。

番外編 終わり。
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プロフィール

天野幸音

Author:天野幸音
ようこそ、野良猫の溜まり場へ。
お茶もお洒落な音楽も無いけれど、ちょっと変わった物語がここにはあります。

・・・多分?

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