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月と太陽の出ぬ間に


第一話「似たもの同士?」

「・・・ああ、面倒臭い。」

アクシデントとイベントだらけの、まさに恋愛ゲームのごとくの悩める休日を過ごした、その翌日、また面倒な学校が俺を待っていた。
とはいえ、通うのは習慣であり、行かなければ行かないでやることが無い。
我ながらつまらない人間だと思う。
気だるい気持ちになりながらも、この日俺は、珍しくも規則正しく登校していた。
目の前は下駄箱だらけだと言うのに、気分はまだまだ夢の中であった。

「・・・おはよう、成瀬。」
「ああ・・・おはようさん・・・って。」
「・・・?」
「や、柳野?」
「・・・そうだけど?」
「・・・お、おはよう。」
「うん、おはよう。」

しかし、やはりどうにもここは現実で、学校の中らしく。
意識を現実に戻すと、2年女子の色をしたリボンの制服を身に付けた柳野が、俺に向かって声を掛けて来ていた。

「・・・ほら、眠いのは解るけど、早く行かないと、HRが始まる。」
「あ・・・ああ、だな。」

特に何かを言うわけでもなく、俺の眠気を察しながらも、導く様に前に歩き出す柳野。
予想はしていたが、同じ遅刻仲間では無さそうだ。
そもそも、遅刻をしている様な人間なら、多分俺も見知っていたであろうし。
今までアイツに気づかなかったのは、アイツが至って普通の学校生活を送っていたからに他ならないだろう。

「・・・そういえば、猫、飼ってるんだって?」

短い教室への道中、柳野はふとそんな話題を振ってきた。
やはり、無言が辛いのはお互い同じだったらしい。
以前とは違って、スムーズな口運びになっていた。

「まぁ、成り行きでな。」
「・・・・・・今度、見に行ってもいいかな?」
「別にいいけど、面白いもんでもないぞ?」
「!・・・ありがとう!」

情報元は明らかなので今更驚くことは無いが、こいつがこんな表情をするのは驚くしかない。
満面の笑みで喜ぶ柳野は、まるで別人。

「・・・猫、好きなのか?」
「ううん、動物なら全部好き・・・。」
「・・・とても動物好きには見えないんだけどな。」
「・・・うん・・・そう言われる・・・何でだろう。」
「・・・自覚が無いのはとても良い事だな、うん。」
「・・・?」

とはいえ、元より不良と言う話自体、俺自身直助の話でしか知らないし、多分コイツにはそんな自覚は一切無いだろう。
つまり、デマである事も十分に在り得る。
いや、多分そうであろう。
今の俺には、コイツが人を殴る姿など、想像も出来ないのだから。
普通の女子同様に笑い、普通の女子同様に好きなモノの事を話す柳野に、俺は思わず笑ってしまった。
少し前では想像も付かない図、何も知らないクラスメイトが見たら驚くであろう。

――

「なっ・・・なっななななな成瀬!?。」

予想的中、そう言うべきか。
教室に入って早々、五月蝿い声が聞こえてきた。
もはや言うまでも無いが、直助である。
当然、コイツも何も知らないの一人であり、目の前の光景は思った通りで。
しかしながら。

「騒々しい、何だ。」
「いつの間に君らそんなに仲良しに!?」
「・・・ついこの前?。」
「・・・この前?」
「んな馬鹿な!?何があった!?、一字一句もらさず説明しろ!!。」

リアクションの度合いから、明らかに直助の言ってる仲良しは違う捉え方をしていらっしゃる、さすがというか何と言うか。
前回あれだけ柳野に惚れたのだとか何とか聞いておいて、明らかに動揺しすぎな直助。
このままだと余りにも五月蝿く目立つので、面倒くさいながらも、一応は大まかな事情説明をする事にした。
と言っても、端折る部分も言う程無く、深い経緯がある訳でも無く、説明は1分と必要なかった。

「・・・と言うわけだ、お前の思っているモノとは天地ほどに違う。」
「嘘付け!なんてハレンチな!ついこの前知り合ったばかりでもうそんな関係に・・・!」
「声がでけえし、そして明らかに誤解だし・・・お前その妄想癖直さねぇと一生彼女なんて出来ねぇぞ。」
「うっさい!余計なお世話だ!」

そんな浅い説明が良く無かったのか、勢いのままに疑いを続ける直助。
本当に面倒臭い奴である。
ネコ型ロボットでも連れて来て人格改変でもして貰いたいモノである。

「・・・ああ・・・俺の知ってる成瀬はもっと純粋無垢で穢れを知らないと思っていたのに・・・こんな不良娘と・・・。」
「!・・・。」
「・・・柳野?」
「・・・。」

困り果てた俺と柳野の事などお構いなしに、終いには勝手に呆れる直助。
その馬鹿の発言がいけなかったのだろう、柳野は表情を暗くし、一人無言のまま、直助の横を過ぎ、自分の席へ行ってしまった。
これは柳野でなくてもいい顔はしないだろう。

「あのなぁお前・・・人に敬語使えって言ってた奴が当人前に不良娘はねぇだろうよ・・・。」
「なっ・・・僕のせいかよ!・・・大体、そんな噂を流されるような事をするのが悪いんじゃないか・・・。」

しかしながら反省の色を見せない馬鹿。
いっそ四次元空間にでも飛ばしてやりたいものである。
とは言え、文句も言ってられない。
俺は直助に謝らせる様訴えかける事にした。

「と言うかだ直助、噂ってそもそも―。」
「―噂ってのは好きで流すもんでもねえんじゃないのかなぁ?。」

その、早々だった。
後ろから、聞き慣れない声が聞こえた。
少し男らしく低いが、だが女性だと解る、凛々しいと言える声。

振り向くと、俺より少し小さい身長の女性が仁王立ちで立っていた。
俺より小さいとは言っても、女性からすれば柳野と同程度、高いクラスに入る。
そして、高いクラスなのは身長だけではなく、其の女性は赤いリボン、3年生だった。
耳に届くくらいの、紅褐色の短いボブヘアーに、きりっとした顔は、どこか姉御肌な女性を思い浮かばせる。

「へ、へい、そうですよね・・・スイマセン・・・って、・・・どちら様でしょうか・・・?」
「ん?どちら様と聞かれると、通りすがりの3年生だよ。」
「へ、へい、そうですよね・・・ヘヘヘ。」

それが解ったのか、直ぐに弱腰になる直助、解りやすい小物っぷりである。
この時、俺は返答を待つ前に、直ぐに彼女が誰だかを思い出した。
お昼休みに、柳野と飯を食っていた先輩だ。

「・・・空。」

彼女に反応したのか、柳野は席を立ち、こちらに向かってきた。
空と呼ばれる先輩も、その声にニカッと笑って応え、手招きする。

「どう・・・したの?」
「どうしたもこうしたも無いよ、アンタっていつもおっちょこちょいなんだからさ、ほら、弁当。」
「あ・・・・・・ご、ごめん、忘れてた。」
「これだから可愛いのよねぇ風華は~。」
「・・・今のどこに可愛い要素が・・・。」
「まぁまぁ、天然なのがいいのよ~。」
「・・・?」

柳野とはまるで正反対、それが初見の印象だった。
さばさばとしていて、面倒見が良さそうで。
柳野の頭を撫でて、ニカリと笑う表情は、姉御肌と言う事場を思い浮かばせる。

「・・・で、アンタら」
「は、はい!」
「・・・。」

そこから一変、ギロリとこちらを睨む先輩に、完全にビビっている直助。
勿論、教室には他の生徒も居る、彼らもこちらに目が入ったらしく、ヒソヒソと話している。
なおかつ、教室の入り口のため、ここに来る生徒には嫌でも目に入るだろう。
俺も一瞬は叱りを受けるものだと覚悟したが、次の瞬間。

「この子とは友達?」
意外な質問が向かってきた。
意図を考える意味は無い、俺は正直に答える事にした。
「・・・俺はそうですけど、コイツは違います。」
「なっ・・・てめえ成瀬!一人だけ逃げようったって―。」
「あーのさ、なーんか勘違いしてない?―・・・別に取って食おうって訳じゃないんだからさ。」
「・・・俺は本当に友人っス、知り合ったのはついこの前だけど。」
「ふーん、アンタは?」
「僕は・・・ただのクラスメイトってだけッス。」

直助の答えにも、「ふーん」と頷くだけの先輩。
柳野もただ、それを見ているだけだ。
そして、数秒の間が空いて。

「そういえば名前を聞いてなかったね、なんて言う?」
「成瀬です。」
「直太っス!」
「わかった、んじゃ成瀬君、後でお昼一緒にどう?、自己紹介も兼ねてさ。」
「え・・・自分がですか?」
「そ・・・後、直太君、今度この子の事不良だなんて言ったら張り倒すから其のつもりでよろしく。」
「は、はい!」
「よろしい、んじゃもう直ぐ予鈴鳴るし行くわ、またね風華。」
「・・・うん、また。」

そう言って、一陣の風は去っていった。
どこかその去り際の後姿は、男には無い格好良さを感じた気がする。
とはいえ、あまりにも急すぎる人物の登場に、俺も直太も、頭の方は付いていっていなかった。
一つ解るのは、柳野の友人であると言う事。

「・・・成瀬、ごめん。」
「別に気にしちゃいねえよ、今のは一方的に直助が悪いしな。」
「何だよ、僕だけが悪者みたいじゃないか・・・。」
「・・・ごめん、直助君。」

そんな奴に謝らなくてもいいのに、柳野は律儀にも謝る。
そもそも被害者だというのに、これでは不良どころか聖女である。
直助と呼ぶのは多分俺の影響だろう。

「・・・直助じゃねえし君は要らねえ・・・まぁ、不良扱いしたのは謝るよ、ごめん。」
「・・・ううん、私も過剰すぎた。」
「・・・こうも真っ向から謝られると返せないよ・・・ホントに不良・・・?」
「だろ?」
「うん、全く不良に見えない、今見てみると、ただの見掛け倒しだ。」
「人は見かけによらないってな、まぁ見かけ通りの奴も居るけど。」
「僕の事!?」
「まだ何も言ってないだろ。」
「いいや言ったね!もう言った様なもんだ!僕は見た目軽そうだけど中身重視!中身が―!」

其の時、直助の主張を無視するかのように、予鈴は鳴った。
面倒を省いてくれたソレに、俺は初めて感謝するのであった。

――

―・・・あれこれつまらない授業が進んでお昼休み、俺は柳野と食堂に向かい歩き出していた。
偶然、俺は今日弁当を持っていなかった、そして手持ち金は約400円。
そろそろバイトでも始めるべきだろうか。
妹よりも遥かに貧乏な兄である。

「・・・成瀬、これ。」

食堂に繋がる廊下を歩く短い道中。
まるでそんな俺の心中を察するが如く、柳野は俺に、朝に先輩から貰っていた弁当を見せた。
紅い風呂敷に包まれているが、良く見ると明らかに大きい。
縦に若干大きいそれは、3段弁当くらいはありそうだ。
運動会じゃあるまいし。

「・・・これがどうかしたのか?」
「私一人じゃ全部食べられないから、よかったらって。」
「お、ちょうどいい、今日は弁当無かったんだよ。」
「そっか、七海さん、大変だものね。」
「・・・最初から思ってたんだが、どうして俺は成瀬って呼び捨てなのに、七海だけさん付けなんだ?」
「・・・風格?」
「さいですか・・・。」
「―君もだったらコイツの事柳野さんって呼ばなきゃなっ!」

またも後ろから、朝と聞いた同じ声がした。
と、今回は声だけではなく、後ろからドン、と衝撃。
俺と柳野の間に飛び込んで肩を組んできたのだ。

「うをっ・・・先輩。」
「・・・空。」
「おっす、・・・お前らなんだかリアクションが似てるなぁ。」
「そうっスかね。」
「そうっスよ、後はなんだか雰囲気がね。―まぁそんな事より飯にしよーぜ!。」
「は、はぁ・・・。」

と、何故かテンションの高い先輩に押され、間も無く食堂に到着。
今日も賑やかな食堂、その端っこのテーブルに俺達は座った。
そして途端に、先輩は弁当箱を開け、「いただきます!」と手を合わせ、食べ始めた。
と、そこで驚いたのはその弁当のサイズ。
柳野が受け取ったサイズより小さいものの、明らかに一人用じゃない。
ピクニックで2人や3人が食えるような量である。
だから運動会じゃないって。

「成瀬、食べよう。」
「ああ、サンキューな。」

と、そんな事を思っているうちに、こちらも大きなサイズの弁当を食べ始める。
周りから見たら、ハンデ有りのフードファイトでも始めてるのではないか、と思うくらいのサイズの弁当たち。
それを先輩は恐ろしいペースで食べる。
柳野もそれに何一つ口を出す事無く、口に運び始める。
つまり、一度や二度の光景ではないと言う事。
・・・郷に入ってはなんとやら、か。

両手を合わせ、俺も箸を手に持ち、食べ始めた。
まずは大好物玉子焼き。
そして定番鮭の塩焼き。
冷凍モノがよく入っている肉団子。
質より量で作っているかと、最初は疑ったが、どれも食べてみてびっくり、これがうまいのなんの、七海の弁当に負けず劣らずだった。

「・・・これ、先輩が?」
「んぁ?・・・ああ、うん、うち弁当販売の店でさ、看板娘やってるんだ~、良かったら今度商店街で買いに来ない?」
「考えておきます・・・それで、今日、どうして俺を呼んだんですか?」
「あ、そうだったね、自己紹介するんだったっけ、すっかり忘れてたや。」

とケラケラ笑う先輩。
やはりこういう人は陸上部とかに通うもっぱらアウトドア派なのだろうか。
改めて見てみると肌もどこか薄い茶色。
今年は熱い日が多いらしく、5月辺りから太陽は降り注いでいたからだろうか。
色白な柳野と比べると、随分色黒に見える。

「あたしは空、神崎空、見ての通り3年生、趣味はダンスに陸上系全般、読書も嫌いじゃないかな、後は遊ぶ事全般!血液型はA型。風華とは幼馴染、ちなみに今はフリーっす。」
「・・・フリー?」
「彼氏も居ないよって事!どう?お買い得よ?」
「・・・遠慮しておきます、そもそもお買い得って・・・。」
「おやおや、残念。―っと、それじゃ君の自己紹介をお願いしよう!」
「紹介する事なんて特に無いですけど・・・、成瀬悠斗です。趣味は特に無いです、血液型はAB型。今はフリーっす。」
「なんか至って普通のどこにでも居る少年だねぇ、恋愛ゲームの主人公みたいな設定・・・。」
「・・・やったことあるんスか、恋愛ゲーム・・・。」
「あるよ?」
「え・・・。」
「女の子だってそのくらいするさ~。―うし、それじゃ次、風華!。」

そう言われると、さっきから黙々と食べていた柳野は、箸を置き。きょとん、とこちらを見る。

「・・・私も?」
「あったり前じゃない!アンタだけ言わないのは不公平、OK?」
「・・・本気で?」
「本気で。」
「・・・うう・・・。」
「キャーフウカチャーン~。」
「・・・いやだなぁその掛け声・・・。」

自分の紹介するだの言っておいて、人を紹介をさせるとは、恐ろしい。
この二人がどうやって友達になったかが少し気になるところである。
「・・・や、柳野風華、留年したから今は2年生、趣味は絵を描くこと、読書を少々。部活動は美術部部長、掛け持ちで運動部少々。血液型は0型、ちなみに今はフリー・・・。」
「もしもーし、風華さーん?フリーって所まで真似しなくていいのよー?」
「・・・!?」

素でそれが基準だと思ったのか、顔を真っ赤にして焦る表情を見せる柳野。
もしかして、コイツも天然なのだろうか。

「もう~可愛いんだから、・・・というか、3人揃ってフリーとは寂しいのぅ。」
「そこは別にツッコむところでも・・・。」
「卒業までには彼氏がほしー!とかあるじゃない?普通。」
「・・・あるの?」
「アンタは本当に勿体無いなぁ・・・顔も良くてスタイルもいいのに、おまけに性格までいいのに。」
「性格はおまけじゃない・・・と思う。」
「あっはっは、気にするな!中身より見た目!・・・あ、そういえば飲み物忘れた、風華、買ってきて~。」
「うん、わかった。」

唐突の友人の頼みにも文句一つ言わず引き受ける柳野。
急いでるわけでもないのに、近くの自動販売機まで駆けて行った。

「・・・いつもあんな様子なんですか?というか、いつもこんなやり取りなんですか・・・?」
「もぐもぐ・・・んぁ、うんうん、あの子は人の頼みは断れないタイプなのよ。」
「・・・解る気はするけど・・・それ解ってて頼みますかね・・・。」
「頼む頼む、遠慮しないのが友人間を保つコツだよチミ?」
「・・・。」

既に弁当の半分を平らげ、ご飯粒を頬につけたままニヤリと笑う空先輩。
恐るべし、弁当屋の娘・・・なのか?

「おまけに自分からは余り言い出さない子だし、だから友達って少ないのよ、密かに人気は高いんだけどね。」
「はぁ・・・でも、どうしてそんな奴が不良だなんて?」
「んー・・・それは企業秘密、乙女の過去に触れるのはタブーよん・・・でも断言しておくわ、あの子はなんにもしてないの、ただ人助けをしただけ、君ならわかってくれると思うんだけどなっ?」
「・・・内容は良く解りませんけど、柳野が悪い事をするような人間ではないってのは何となく解ります。」
「うんうん、そう言ってくれるとお姉さんも嬉しいね~。―あ、ちなみに、風華には今の話内緒ね?」
「どうしてですか?」
「照れるからさ!」
「・・・納得しておきます。」
「・・・おまたせ・・・どうしたの?空・・・。」
「あっははは。なんでもないよ?ただ風華が成瀬少年に惚れたんじゃないかーって話を少々ね!」

俺の背後から急に現れ、ジュースを差し出し、隣の席に座る柳野。
俺の分のジュースまで持ってきてくれたのは、柳野らしい心遣いだろう。
そんな柳野に先輩は、止せばいいのに、変な方向へ話を振る。

「・・・。」

勿論、柳野の表情は固まり、数秒後、困った顔になる。
そりゃそうだ、明らかな無茶振りですから。
何故か俺までも反応に困ってしまったのは、情景反射に他ならない。

「あれ、もしかして両思いとか?。」
「「違う!」」
「あっははは!知ってるっての!、だからそんなに必死に否定しないでよ~、笑っちゃうんだか・・・あっはは・・・!。」
「・・・そりゃ急にそんな事を言えば慌てるでしょうに・・・。」
「君も柳野と同じツッコみ方をして・・・似た者夫婦!?あーっはっはっ!」
「・・・いつもこんな豪快な笑い方なのか?」
「お恥ずかしながら・・・。」

―その後、恐ろしい事に、先輩は半分とは言え、まだあれだけあった量の弁当をペロリと平らげてしまった。
俺と柳野が半分ほど遺した弁当は、帰ってからまた食べるらしい。
・・・太らないのだろうか?。
・・・答えはそのスタイルを見れば解る、か。

そして楽しい(?)昼食も終わり、先輩と別れた俺と柳野。
もうすぐ授業が始まるので教室に戻らなければならない。
全く、どうして授業は長く感じるのに、休みというのは短く感じるのだろうか、全くもって不思議である。

「・・・ごめんね、わざわざ付き合わせて。」
朝聞いたような台詞を、また柳野は吐いた。
全く持って悪いという事は無いというのに、どこまで健気なのだろう。
「いいよ、飯にもありつけたし、正直金が無くて困ってたからな・・・それに、面白い人と出会えたし。」
「そっか・・・良かった。」
「心配する事でもないだろ、そんなに嫌われてるのか?」
「ううん、全然、私なんかより全然人気者・・・ただ、見た通り、発言がストレートすぎるから・・・。」
「なるほどな、まぁ人によってはいい気分にはならないかもな。あ、後、お前も密かに人気が高いんだってさ。」
「・・・え?」

そんな道中、早速俺は、秘密だと言われていた事を暴露していた。
例を見てただけに、隠す事でもない気がしたのだ。

「・・・人気・・・ね。」
「俺も良く解らんが・・・美術部員達の事じゃないのか。」
「・・・それはそれで、うれしいような・・・。」
「人気者は辛いねぇ・・・?」
「・・・空の意地悪が移ってる・・・。」
「いや、コレは元々。」
「・・・もっと性質が悪い・・・。」
「まぁ、人気云々は置いといて、良い人じゃんか、どこか直助に似た感じすっけど。」
「あはは・・・空は底なしに明るいからね。」
「確かに、あの人が落ち込む姿は想像が付かないな。」
「だよね、本当。」

予鈴が鳴り、授業の始まりを告げようとしている。
「―と、授業始まっちまう、早く行こうぜ。」
「あ・・・そうだね。」
かといって、走るわけでもなく、ただ少し歩くペースを早くするだけ。
廊下は走るな、だっけな。

「・・・似た者、か。」
「・・・な、何を急に・・・。」
「いや、似た者夫婦だとか言う話は置いといて、似た者って点はあってるかもなぁってさ。」
「・・・?」

唐突な俺の言葉に、全く解らない、と言わんばかりに柳野は疑問を浮かべる。
俺自身、このタイミングで、どうしてこの話題を割り込ませたかは解らない。
ただこの時、拾った猫二匹と、一人の少女の顔が浮かんだのだ。
理由にするとすれば、多分それ。

「まぁ俺の場合頼まれても居ないが・・・何であの時猫を拾っちまったんだろうなぁってさ。」
「・・・猫、成瀬が拾ったの?」
「そ、とある女の子が飼えないってのに面倒見てたのを見ちまってさ、気づいたらそんな事言ってた。」
「・・・優しいんだね。」
「どうかな・・・見ての通り不良だし。」
「見てくれだけじゃ人は判断できないよ。」
「・・・お前が言うと説得力あるな。」
「・・・それはどうも。―ああ、でも長年付き合ってる直助にはそんな優しさは一度も見せた事無いな、不思議なもんで。」
「・・・不平等。」
「いやいや、多分特別なんだよ、彼は。」

と屁理屈を言いながら教室へ戻り、お互い席に着き、授業の準備を始めた。

確かに、特別ではあるかもしれない。
なにせ、あんなに毒を吐ける相手など直助しか居ないのだから。

そんな事を思い、俺は当人が後ろに居るのにも関わらず、つい笑ってしまうのだった。

第一話 続く。
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プロフィール

天野幸音

Author:天野幸音
ようこそ、野良猫の溜まり場へ。
お茶もお洒落な音楽も無いけれど、ちょっと変わった物語がここにはあります。

・・・多分?

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