スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

季節外れのベロペロネ

前回までのあらすじ。

1:デパート。
2:何か付いて来た。
3:迷子。

・・・休日って言うのはさ、こう、体だけじゃなくて、心も休まらなきゃいけないんだ。
少なくとも、酔っ払いを介抱したり、ゲーム好きの姉妹の遊びに付き合ってやったり、馬鹿な居候と漫才をやったりとか、そういうのじゃなくてさ。

一人のんびりと買い物したり、小説を書いたり、美人な管理人さんの買出しを手伝ったり、あわよくば食事をご馳走になったり、とにかく、心癒されなければいけない。
そんな日を休日、と俺は呼ぶんだ。

「うーん、やっぱり出かけた先で食うアイスは美味いなぁ。」
「うまいなぁー。」
「・・・。」

少なくとも、こうして二人の子供を子守する事は、休日と俺は言わない。
ましてや、この状況は。

第三話「はじめての迷子」

「なんやコータ、浮かない顔して。」
「・・・そりゃお前、迷子センターに向かうはずが何でレストランに居るか、俺は聞きてぇよ。」
「そりゃ、ひまちゃんが言うたからや。」
「いうたからや~?」
「・・・あー。」

そう、迷子センターに向かった筈の俺らが居るのは、デパート内のレストラン。
迷子の少女ことひまわりちゃんが『アイス食べたい』の一言により、現在に至る。

・・・ああ、断る事も出来たろうさ。
だが、相手は子供、言い出したら止まらないのは言うまでもない。
加えて、姫子も賛成し出したのだから、もう面倒臭い。
絶対にアイス目的であろう、俺はそう察しながら、首を頷かせるしかなかった。
当然、ひまわりちゃんがアイス代を払える筈も無く、要するに俺持ちなワケで。

「お前は自費な。」
「・・・えっ?」
「・・・何奢って貰う気でいたワケ?」
「お兄ちゃん、ひまわりには奢って私には奢ってくれないんっ?」
「ははは、可愛いなぁ妹コラ。」

だからだろう、姫子の解り切った反応には中々イラっと来た。
せめてそこはウチが払う、と言って欲しかったよお兄ちゃんは。
・・・ああ、自分で言ってて気持ち悪い。

「とにかく、二人ともさっさと食べて、ここ出んぞ。」
「えー、もうちょっとゆっくりしてこうやー。」
「お前な、状況解ってんのか?その子迷子だぞ。」
「だからどうしたん?」
「親御さんが心配してるだろうが、今頃必死に探してるかもしれんし。」
「・・・むー。」

正論に対し、不満げな顔を浮かべる姫子。
確かに、食事を急かされるのはいい気分じゃあるまいが、そこまでか?
しかし、意見は受け入れられたらしく、姫子は僅かながらに食事ペースを早めた。
もっとも、食べていたのはアイスであり。
数分後、美味しそうにアイスを食べるひまわりちゃんの横で、頭を抱えている姫子が居たのは、言うまでも無い。




「あーおいしかった~。」
「・・・うう、酷い目にあったわ・・・。」
「急いで食うからだ。」
「急かしたのは誰や!?結局意味無いし!」
「アーアーキコエナーイ。」

ひまわりちゃん(略称ひまちゃん)がアイスを食べ終わり、一同はレストランの外へ。
額を片手で押さえる姫子に、俺は一応は罪悪感を感じながら、姫子の文句に耳を抑えた。
まぁ、そうだよね。
俺がどうこう言った所で、ひまちゃんが食べるペースは変わらないからね。

「・・・で、後どのくらいで着くん?」
「ん、もう直ぐ。―距離的にはもう見えると思うんだが。」
「ほう・・・。」

その罵声がようやく落ち着いた頃、俺が耳の栓を外すと、姫子はそんな事を聞いてきた。
さっきまでそんな事気に掛けてなかったであろう奴の台詞だとは思えない。
しかし、一応は気に掛けていたらしいのか、返答に対して安心したかの様な反応を見せる。

そう、いくら広いこのデパートでも、地図さえあれば其処へ至るのに掛かる時間はそう多くない。
実質レストランに居た時間の方が長かったろう、脳内マップを見る限り、迷子センターはもう近くにあるだろう。

短い戦いだったが、思い返せば・・・。
と言った感動もある筈は無く、俺は内心、ただただこの厄介の終わりを喜んでいた。

「もうすぐ迷子センターやで、ひまちゃん、お父さんお母さんに会えるで。」
「・・・う~ん。」

それとは反対に、先ほどの姫子の様、どこか不満げなひまわりちゃん。
もうすぐ両親と会えるなら、喜ぼうものだろうが、何か違うらしい。
そんな彼女の表情に、姫子もおかしいと思ったのだろう、聞いた。

「どないしたん?」
「・・・いや。」
「・・・いや?」
「ひま、いきたくない!」
「・・・ええっ!?」

嫌な予感が当たったと言おうか、飛び出た爆弾発言。
子供は感情と空気に敏感だ、俺らの会話と合わせて、別れの気配を察したのかも知れない。
その場にペタンと座り込んでしまった。
ああ、この光景バイト先でよく見るよ。

自分の状況を解っているのだろうか。
それとも、解っていながらそう言っているのだろうか。
どちらにせよ、それは困る。
当然、俺は説得する。

「・・・あー、ひまちゃん、お父さんお母さんが心配してるんだよ?」
「・・・やだ。」
「それだと、ずっと迷子だよ?それでもいいの?」
「・・・やだ。」
「じゃあ行かなきゃ駄目じゃないか。」
「やだ!」
「・・・あー。」

はい、失敗。
ああ、カワイイから怒るに怒れねぇよチクショウ。
加えてこのガンコさだ、手ごわい事この上ない。

始まって早々だが、俺としてはお手上げだった。
しかし、お手上げのままにしておくワケにも当然いかず。
さて、どうしたものか。
などと考えていた、その時だった。

「―ダメやでひまちゃん、お父ちゃんとお母ちゃんを心配させちゃ。」
「・・・ひめおねえちゃん?」

ここで意外な助け舟が現れた。
言うまでも無い、姫子である。

さっきまでひまちゃんの意見を全通ししていた女の台詞とは思えないが、どうやら今回はこっちの味方らしい。
俺はもちろん、ひまちゃんは驚きを隠せない様子だった。

「きっと今頃、二人とも心配してるで?だから行こ?ひまちゃん。」
「・・・いやだ!ひまはひめおねぇちゃんといっしょがいいのっ!」

とは言え、やはりそこは頑固が売りの駄々っ子、そう簡単には譲らない。
ばたばたと足を動かしながら、否定の意を露わにするひまちゃん。
まさに子供パワーと言ったところだろう、末恐ろしい。
後先を考えない所が特に。

しかし、姫子は次の手を考えていたらしく、慌てる様子も無く、笑顔で言った。

「んじゃこうしよか、おねえちゃんと一緒に、あっち(迷子センター)で、お父ちゃんお母ちゃんを待つ、どや?」
「・・・ほんと?」
「ホント、あそこは色々遊ぶモノあるからええで~、一緒に遊ぼ!」
「・・・うん!」

そう話す姫子に、満面の笑みで答えるひまちゃん。
どうやら丸く収まったらしい。
だが、俺は聞き逃さなかった。

「・・・あの、姫子さん?」
「何や。」
「一緒に待つってどう言う事でしょうか。」

『一緒に迷子センターで、両親が来るのを待つ』
それはつまり、俺達まで迷子センターのお世話になると言う事だ。
当然、当初の予定にそんな話はある筈も無く、俺としては預けて後はお任せ、と言う勢いだっただけに、その提案は完全に予想外。
しかし、姫子は当たり前の様に答えた。

「んなもん、言葉通りや。」
「・・・マジで?」
「いいやろ、お兄ちゃん?」

見ろ、このしてやったりな顔。
全然やってねぇ、むしろ俺としては状況悪化だよ。
待つならお前一人で良いだろう、と言いたい所だ。

・・・ええ、勿論言えませんとも。
あんな満面の笑みで喜ぶ子供の前で『俺は帰る』なんて出来ませんよ。
解ってて言いやがったなアンチクショウ。

返答も待たずひまちゃんに微笑みかけ、『お兄ちゃんも着てくれるってー』などと吐く姫子。
俺は敗北感を覚えながらも、同じくひまちゃんに笑いかけるしか出来なかった。




「―ええ、その子のご両親でしたら、先ほど此処に訪ねて来ましたよ。」
「ホンマですか!?よかったぁ・・・。」

程無くて、迷子センターへ辿り着いた俺達は、まず其処に居た職員に事情を話し、両親が着たかどうかの確認をとった。
結果は予想通り、両親は此処へ尋ねて着ていた様だ。

・・・本当にごめんなさい、ひまちゃんのご両親。
ウチの馬鹿が拾ってなかったのなら、もっと早くに会えたやも知れません。

喜んでひまちゃんの頭をなでる姫子の横で、俺は内心、まだ見ぬひまちゃんの両親に申し訳ない気持ちで一杯になっていた。

「んじゃお父ちゃんお母ちゃんが来るまで遊ぼっか、ひまちゃん。」
「うんっ、あそぶあそぶ~。」
「・・・。」

当然、そんな俺の罪悪感など知る筈も無く、待合室にあるおもちゃを手に遊びだす二人。
こう遠くから見てみると、まぁ姉妹に見えなくもない。
係のお姉さん同様、俺はひまちゃんの笑顔に心を癒されながら、そんな姉妹の姿をしばらく見守っていた。

・・・見守っていたかったのだが。

「―現れたな!魔法少女ファルゥ・・・!」
「でたなわるものっ!やっつけてやる!」
「やってまえファルー!」

気付けばあら不思議、ごっこ遊びに参加させられているではありませんか。
国民的なアニメの主人公に、世界を脅かす怪物。
そしてその怪物に捕まっていた市民A。

市民Aは必要だったか?と聞かれたら、誰だってNOと答えるだろう。
俺だってそうだ。
多分俺に怪物役を強要した姫子だってそう答えるだろう。
・・・数合わせの為のキャラ増加なんてのは良くあるけどさ。

いいお兄ちゃんね、と言う係のお姉さんの声が聞こえた。
・・・ええ、全くそう思います。
でも妹は一人でいい。

―その後も俺は彼女らの遊びに巻き込まれ、悪役が続いた。

爪で体を裂かれたり、口からファイアーで体を焼かれたり、翼で真っ二つにされたり。
おおよそ魔法少女とは思えない力技で、何度も殺された。

それもそのはず、この国民的魔法少女アニメ『魔法竜少女ファル』は主人公が魔法少女とは程遠い、肉弾戦で大抵の怪物を倒してしまう少女アニメ(?)。

少しだけ、毎度やられる彼らの気持ちが解った気がした。
正直、どこに、魔法の要素があるのかを聞きたい。

だがその演出や力押しがウケたのか、人気に火が付いてからもう何年も続いている。
どうやら彼女、ひまちゃんもファルのファンだった様で。
結局ご両親が戻ってくるその時まで、俺は健気にもやられ役に徹する事になるのだった。




「―本当にありがとうございました、何とお礼を言ったらいいのか・・・。」
「いえいえ、大した事してませんし、お気になさらず。」

気付けば、窓の外は夕焼け。
此処に着いたのは午後3時辺りだから、ひまちゃんを保護してから結構な時間が経っていた。
安堵の表情で娘を抱く母親に、そう言って頭を下げる父親。
年齢が年齢だけに心配だっただろう、表情からそれを伺うのは難しくは無かった。

その正面では、笑顔でお辞儀を返し、良かったね、とひまちゃんの頭を撫でる姫子。
いつもそれ位礼儀正しくしてくれると嬉しいんだがね。

「ほら向日葵、ちゃんとお礼を言いなさい、お世話になったんでしょう?」
「・・・。」
「・・・ひまちゃん?」

しかし反対に、ひまちゃんの表情はどこか優れなかった。
まぁ、理由は大体解るのだが。

「―おねえちゃん、ばいばい?」
「・・・うん、せやね。」
「・・・。」
「・・・どうしたの?向日葵。」
「・・・おねえちゃん、またあえる?」

気に入りすぎ、と言うのも考え物と言う奴だろう。
姫子の腕を掴んで、そう聞くひまちゃん。
この場面だ、別れの気配を感じないワケが無い。
姫子を見つめるその目は、子犬の様にうるうるとしていた。

だが悲しいかな、恐らく二度と会う事は無いかも知れない。
タダでさえ滅多に来ないデパートだ、今日会えたのは偶然も偶然。
一月に一度来たとしても、向こうが同じ日に来る確立はかなり低い。

しかし、姫子は間を置く事も無く答えた。

「勿論や、また会えるで。」
「・・・ほんとうに?」
「ホント、だから良い子にしてるんやで。」
「・・・うんっ!」

根拠は、多分無いだろう。
だがきっと、俺も同じ様に答えるだろう。
そう言っておけば、また会える気がするから。

「またね!おねえちゃん!」
「またな!ひまちゃんー!」

オレンジ色の光を背景に、互いに手を振り、『ばいばい』。
まるでドラマの一コマの様。
少しずつ小さくなっていくひまちゃんを、姫子はそれが見えなくなるまで、手を振りながらずっと見ていた。
その横顔は笑顔なのだが、どこか、悲しさの様なものを感じさせて。
そう、泣いている様にさえ見えたのだ。

「・・・なんやコータ、その顔。」

つい顔を見すぎていたのだろう、姫子は俺と目を合わせ、その理由を尋ねる。
その顔は勿論泣いてなんかおらず、いつもの生意気な顔である。

「・・・またって言ったが、会える確信でもあんのか?」

気のせいか、などと思いつつ、俺は適当な質問で返す。
なんだそんな事か、などと鼻で笑った後、姫子は答えた。

「アホかコータ、あの場面で『もう会えない』なんて言えるワケ無いやろ。」
「・・・ま、そりゃそうだ。」
「・・・いやまぁ、コータがお小遣いさえくれればうちは毎日でも此処に来るけどな?そしたら多分会えるかもしれんけど?」
「ねーよ。」
「ちぇ、ケチ。」

ああ、多分気のせいだ。
相変わらずの口の悪さに、俺は考えるのを止めた。

大体、今日のどの場面に泣きそうな所があったものか。
・・・俺自身としては今日は散々な目にあったと、泣きたい所ばかりだったが。
よもやこの年になってごっこ遊びをする事になろうとは、思っても居なかったよ。
正直、アレはかなり恥ずかしかった。

まぁ、楽しかったか、と聞かれると否定も出来ないのだが。
昔は好きだったもの、ああいう遊び。

「でもまぁ、また会えると思うで。」
「ほう、その根拠は。」
「・・・乙女の勘?」
「・・・ぷっ。」
「笑うなボケェ!」
「ぶっ!?」

女の勘(笑)はともかく、また会えると言う意見には賛成だ。
ごっこ遊び以外なら、俺も喜んで遊んでやろうと思う。

だが再会までのその間、良い子にしてなきゃいけないのは、ひまちゃんではなくて間違い無くお前だろう。
強烈なハイキックに見舞われながら、俺はそう確信した。

第三話 続く。
スポンサーサイト
プロフィール

天野幸音

Author:天野幸音
ようこそ、野良猫の溜まり場へ。
お茶もお洒落な音楽も無いけれど、ちょっと変わった物語がここにはあります。

・・・多分?

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。