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季節外れのベロペロネ

1:電話。
2:ゲーセン。
3:捕獲(される)。

相変わらず何が何やら解らないあらすじである。
しかも事実であるが故に、尚タチが悪い。

「それで・・・結局ここですか。」
「いえーい。」
「いえーいって何ですか・・・こっちはちっともいえーいじゃないですよ、強いて言うなら痛ぇーいですよ。」
「おお、なんか上手い事言った様なそうでない様な・・・。」
「微妙な反応なのは解りました、俺はもう喋りません。」
「ああん、ごめーん喋ってー。」

5分とせずに辿りついた、否、連れて行かれたのは、彼女が先ほど現れた方角、即ちアクションゲームのコーナー。
先ほど同様、新作を早くやりたいと言わんばかりの大人達ががやがやと騒いでいる。

・・・俺もその早くやりたい一人ではあるのだが、現心境、やる気は既に0。
理由は言うまでも無い、この尻の痛みである。

「・・・で、何をやるんですか?」
「ほら、この前姫ちゃんとやったゲームあんじゃん?」
「ああ、アレですか・・・俺未経験ですよ、アーケード版。」
「そなんだ、まぁ大丈夫さ、お姉さんが手取り足取り教えてア・ゲ・ル。」
「・・・帰りまぁす。」
「・・・ここで帰ったらいつの日かサボってたのバラしちゃおっかなー。」

しかし現実は非情であり、この場から逃げられる確率も0である。
理由は言うまでも無い、この尻の痛みである。

「・・・ご教授お願いします・・・。」
「うむ、お願いされた!」

まぁ、今我が家に逃げ帰ったところで、不機嫌なお嬢様が寝込んでいる最中であろうし、居心地が悪いだけ。
半場観念しているだけに諦めるのも早く済み、俺はこの時点で空さんとの戯れに付き合う事を決意していた。
・・・この選択が後に響くワケだが、ソレはまた別のお話。

第三話「似たもの同士?」

間も無くしてやってきたのは、以前姫子が座っていたメカゲーの席。
今その席には俺が座り、その横では、空さんがこれでもかと言わんばかりのドヤ顔で見守っている。
・・・何?この状況。

「さぁ、訓練を始めるぞ、地獄を見る覚悟はあるかクズ野郎共!」
「・・・お姉さんキャラの次は何ですかソレ。」
「どっかで見た『外国の酷く口の悪い軍隊教官』風にして見ました。」
「ああ・・・そうですか。」

早速ながらツッコみどころは満載だが、気にしたら負けと言う奴だろう。
ネタにもテンションにも付いていけないのは、俺のノリが悪いからだろうか、それとも、彼女のテンションが高すぎるからなのか。
これが今の都会の標準なら、もう怖くてそっちには行けないです、お母さん。

「未経験つっても、他のアーケードはやるんでしょ?」
「まぁそうっスね・・・格ゲーなんかは良く。」
「なら大丈夫、直ぐに覚えるっしょ。」

そんな訳で始まった、空さんのメカゲー教室(どうやら教官風はやめたらしいが)。
まずは機体選び、なのだが、既に俺の中では決まっている。

「いつもソレ使ってんの?」
「そうっスね、コストの高い機体は好きじゃないんで。」
「それにしても、旧型なんて良く使えるねぇ、しかもバズーカ装備・・・?」
「マシンガンよりはマシですよ・・・近接はどうせ被弾覚悟で格闘しますから、遠距離を少しでも補っておかないと。」
「まぁねー。」

旧式だのコストだの、良く解らない人の為に説明すると、要するにゲーム上での設定と、ゲームにおいて勝敗を分けるルールである。
俺が選択した機体はゲームの時代的には一昔前の現役、言わば老兵の様なもので、機動力も低い、耐久力も低い、武装もマシンガンとバズーカの二択、副兵装は癖の強い手榴弾、格闘は素手と最低のリーチ、と言うあらゆる面で平均以下であり、とてもではないが単体での戦闘は厳しい。
しかし、そんな弱さも強みに変えるのがこのゲームのシステム、いわゆるコスト制で、この機体はそのコストが極めて低い。
高性能な機体は一度破壊されるだけで限られた軍のコストをかなり削ってしまい、敗北のピンチを招いてしまうが、この機体に関してはそれが無く、故に安心して撃破される事が出来るのだ(とは言え、破壊されないのが一番いいが)。

「しっかし、その機体だと教える事無さそうだなぁ。」
「まぁ、操作に多少違和感はありますけど初心者では無いですし・・・空さん、基本高機動型しか使わない派でしょ。」
「トロいのはイライラするし、後ろからチビチビ撃つのは性に合わないし?」
「ですよねー。」

そう、破壊されないと言う自信がある人が使うのが、以前姫子や空の操っていた高コスト機体。
機体性能は天と地の差、早い、硬い、強い、と三拍子揃った万能型から、一能突出型など、使いにくい機体もちょくちょくあれど、弱いと言う機体は存在しないカテゴリーだ。
強い機体に強いパイロット、それが揃った時の力は、いかなる戦況をも容易くひっくり返す。
まぁこの人の場合、そんな事を考えては居ないだろうが。
戦場で楽しそうに敵兵を蹂躙する彼女の姿は、何とも想像に容易かった。

「んじゃーCPU(雑魚)戦で慣れてから対戦ね!」
「・・・いきなりっスか。」
「今の私は教官ではない・・・君の敵だ!」
「・・・今度は何キャラですか?」
「いや、特に無いけど・・・なんかそういう設定って良くあるじゃん?師を超えてみろ、的な流れ。」
「あー・・・。」

そして初指導からの卒業試験と言う、トンデモ教官っぷりを遺憾無く発揮する空さん。
まぁ、この人に関しては初めからまともな形を期待していなかっただけに、驚きはしなかったのだが。

―機体選択とモード設定も終わり、早速始まるゲーム。

まずはCPU戦、いわゆるアーケードモード(一人プレイ)。
難易度をイージーにしただけあって、敵の配置も序の口、高性能メカも居ない。
操作確認と慣れも兼ねただけに制限時間ギリギリまでを費やしはしたが、クリアするには造作も無かった。

まぁ、レバー操作に関しては使い慣れているだけに、問題はこの違和感のみ。
やたらと関心した様子でプレイを見る空さんを尻目に、俺は着々とステージを進めていった。

そして、開始から約10分後。

「―私もう我慢出来ない・・・あなたと対戦したいっ!」
「早っ!?」
「だってだってー、普通に出来てるじゃんーうまいじゃんー。」
「いやまだ全然―。」
「さぁ!お姉さんを満足させてくれ!」
「・・・もうちょっと待つ気はありません?」

まだステージ2をクリアした辺りだと言うのに、どうやら血が騒ぐご様子で。
手には百円、その目をキラキラと輝かせ、『無理~♪』と言い残し、スキップ足で対面席へと跳ねて行く空さん。
よほど対戦に飢えていたのだろうか、生き生きとし過ぎて不気味ですらある。

まぁ気持ちは解らなくも無いさ、この手のゲームはCPU相手に勝つ事なんて通り道。
対人こそがこのゲームを真に楽しむ為の遊び方であり、CPU戦だけで終わると言うのは、このゲームの楽しみの半分を損なう様なモノだ、と言っても過言では無い。

瑠花や梨花に勝った時の喜びと言ったら、それはもう中毒の様なモノで。
・・・つまり、普段の勝率はお察しである。
一般人がゲーマーに勝てる道理なんてのは、基本的に無いんだよ。

そして、彼女も恐らく、と言うか姫子との戦いっぷりから考えて、間違いなく一般の方ではない。
対して、家庭用ゲーム機で多少やり込んだとは言え、金銭的理由でアーケード版は初体験の俺。
勝敗は言うまでも無いだろう、俺としてもゲームを始めるまではソレで良いと思っていた。

しかしまぁ、人間、自分が得意だと思っている事で誰かに負けると言うのはやっぱり嫌な事で。
勘弁してくれーなどと思う反面、空さんの選択する機体、対戦すステージ(地形)から、『どう勝とう』などと計算を始めていた。
我ながら単純だな、とさすがに思う。

―とは言え、それだけで勝てるなら一般人は苦労する筈も無く、作戦で勝てる程、実力の差は小さく無い。
彼女との愛機と俺の愛機との機体性能(特に速さ)の差は、天と地の差。
唯一の取り柄である格闘も、向こうにとっては得意分野、それどころかそれに事関しては最強クラスと来た。

・・・これ以上語るのも虚しいだけに、結論を言うとしよう。
開始から5分とせず、俺の画面には6体もの屑鉄の塊が出来上がりましたとさ。
故に映す価値も無い、それこそ良い子への影響が心配になる絵な為、その酷さは皆様のご想像にお任せしようと思う。
人によっては思い出す前に脳裏に浮かんでくるやもしれない。
所謂、トラウマと言う奴である。

ああ、二度とこの人とは対決しまい、そう心に誓う俺であった。



「もーそんなに落ち込むなよー、男だろ?」
「・・・男だって、泣きたい時はあるんですたい・・・。」
「んじゃ私の胸に飛び込んでおいで!遠慮なく泣くがいいさ!」
「・・・えー。」
「今の少年の気持ち・・・私には痛い程解るわ!私にだって勝てない時期はあった!」
「・・・あー。」

対戦後、喉が渇いた、と言う空さんの言葉でやってきたのはいつかの休憩所。
まぁあれだけ喋ればのども渇くだろうよ、対戦中も、対戦が終わってからの一人プレイでも喋りっぱなしだったのだから。

それでも喋る事をやめる筈も無く、そんな冗談(だよな?)を言いながら両手を広げ、受け止める気満々の空さん。
・・・この人の場合、大体本気(マジ)に見えるから困る。
どっちにしろ飛び込むつもりは無いが。

「まぁ、相手が悪かったのよ、相手がこの最強パイロット空ちゃんだったから負けた、敗因はそれだけさ!」
「自信満々だなぁ・・・。」

若干妬みも篭っていたであろう言葉に対し『事実だものー』とこれまたドヤ顔で返し、缶ジュースを一気に飲み干す空さん。
ぷはーっ、と言う息の吐き方が、なんともオッサン臭い。
どうやら今ので飲み干したらしい、500の炭酸飲料がものの1分とせず空き缶となり、ゴミ箱へと投げ捨てられた。

「次何するー?」
「何って・・・まだ何かするんですか・・・。」
「まだまだ遊ぶに決まってるっしょ!もっと私を満足させてくれよ!」

そしてその時点で俺の休憩も終了。
椅子から重そうに腰を上げる俺をせかす様にそう言って手を引き、彼女は再び歩き始めた。
年代的には余り変わらないはずなのだが、この位置関係は、まるで父と娘である。



「―あ!」
「うぉっ!?」

それから間も無くして、アクションゲームのコーナーに戻った辺りでの事。
突然に大きめな声を上げる空さんに、俺は思わずビクりと身体が動いてしまった。

「ど、どうしたんですか急に・・・。」
「いやー・・・忘れてた事を思い出した時って、やたら声が出ない?」
「ああ・・・。」

何となく反応で理解出来るしそれに関しては同意出来るが、やられる側としてはもう少し音量を下げて欲しいものである。
周囲の目を気にしつつ、俺はとりあえず確認する。

「それで、何を忘れてたんですか?」
「いやね、実は今日、風華と待ち合わせしてたんだ。」
「・・・それ、忘れちゃ駄目な事ですよね?」
「・・・てへ。」

・・・ああ、風華さんはこの人と友達を辞めていいと思う。
舌をぺろりと出し、可愛げな顔を作って誤魔化さんとする(可愛いだけに余計腹立つ)空さんを前に、俺はそんな事を思った。
いい加減な人だとは思ったが、俺が思う以上にいい加減だ、この人。

「いやー・・・目の前に楽しい事があるとどうにも色々忘れちゃうんだよねぇ僕ちん。」
「・・・子供ですかアンタは・・・。」

その発言を元に、俺は何となくだが、多分これが初めてじゃない様な気がした。
気をつけていたら、約束を忘れる事にはならないだろうし。
・・・いやまぁ、気をつけていなくても、そんな事にならないであろうレベルの話の筈なのだが、今は気にしてはいけない。

「とにかく、風華さんの所に行きましょう・・・約束の時間は?」
「・・・ああ、もう過ぎてるー。」
「・・・どのくらい?」
「35分くらい?」
「・・・。」

俺の質問にそう答えつつも、口調は何とも暢気。
遅刻していると言う自覚が無いのか、それとも風華さんなら許してくれると思っているのか。
どちらにしろ性質が悪く、後者に至っては尚酷い。

「・・・急いで行きましょう、せめて急いで遅刻を謝らないと!」

もはや呆れる他無い、とは言えこのままにもしてはおけない。
こうしている間にもあの良い人の塊こと風華さんがまだかまだかと空さんの事を心配しているのだから。
故に、そう話す俺の言葉にも熱が入る。

・・・だが直後、それは杞憂へと変わる。

「―あ、空・・・!」
「お、ウワサをすれば。」
「え・・・。」

聞こえた声に振り向けばあら不思議、そこには風華さんの姿があるじゃございませんか。
紫のポニーテールに、相変わらずの黒基調な服装に、モデルクラスの顔立ちとスタイル。
見間違える事もあるまい、柳野風華さん本人がそこには居た。

「ごめん、コレやってたら夢中になっちゃって・・・もしかして時間通りに来てた?」
「うん、来てたには来てたけども~・・・偶然この子と会ってから遊んじゃって、危なく待ち合わせ忘れる所だったわー。」
「子?・・・あ・・・。」

よほど慌てていたのだろうか、ようやく俺の存在に気づき、まずは恒例のご挨拶。
その両手には、何やら白いビニール袋、大きさにしてスーパーのレジ袋の2Lはあるだろう。
中に入っているのは、キャラ物の人形がコレでもかと言わんばかりに入っている。

UFOキャッチャーとかで取れる景品だろう、ここら辺に人形を売ってる店は無いし。
それは間違いなく、UFOキャッチャーによるもので。
俺はこの時点で、事の全てを把握した。

「・・・待ち合わせ、此処(ゲーセン)だったんですか?」
「うん、風華がついでにUFOキャッチャーに寄りたいって言うから。」
「・・・それで、空さんは俺と遊んでるうちに、風華さんはUFOキャッチャーに夢中になっているうちにと、約束の時間を過ぎてた、と。」
「正解っ!」
「・・・空、それ多分胸を張って言える事じゃないよ・・・。」

何とも言えない表情をする俺を前に、片や親指を立てグッジョブのサイン、片や恥ずかしいと言わんばかりに苦笑い。

反応はこんなにも違えど、互いに理由は同じ、なんとも暢気な遅刻。
何となく、この二人が友人関係で居られる理由が解った気がした、今日この頃である。

第三話 続く。
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プロフィール

天野幸音

Author:天野幸音
ようこそ、野良猫の溜まり場へ。
お茶もお洒落な音楽も無いけれど、ちょっと変わった物語がここにはあります。

・・・多分?

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