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季節外れのベロペロネ


前回までのあらすじ。

1:映画上映。

以上である。
以上ったら以上である。

「・・・・・・。」
「・・・大丈夫ですか・・・?」
「だ・・・大丈夫・・・何とか、生きてる・・・。」

起きては気絶し、気絶しては起きて。
そんな拷問染みた事になっては、まぁ生きた心地もしなかっただろう。
映画館を出た風華さんの一言は、何とも感動的に聞こえた。

とは言え、そのうち寿命縮むんじゃないだろうか?と思える光景に、こっちの心の臓もよろしく無かった。
正直、見ていた映画よりよっぽどホラーだったのだ。
彼女をおばけ屋敷に連れて行った日には、立ったまま気絶でもするかもしれない。
映像でこれでは、偽者とは言え現物が出てきては、声も出ないだろう。

まぁ、何が一番怖いかって言えば・・・。

「ねぇねぇ、もう一回見ようー?」
「「勘弁してください。」」

そんな光景を創りながら、全く悪びれも無く、それこそ天使の様な笑顔でリピートを要求する彼女(空さん)であろう。
・・・間違いなく、彼女に似合うのは悪魔の翼だが。

第四話『嵐の後は?』

「―いやー、映画の後のご飯って美味しいよねぇ。」
「・・・そこには同意するけど・・・あんなの見た後に良くご飯食べれるね・・・。」

映画館から俺たちは、空さんの『腹が減った』の一言で、そこから5分とないファミレスへと着ていた。
映画を見ていた所為か、時間の経過を忘れていたが、時刻は既にお昼時。
俺のお腹も丁度いい程度に減っていた。

「えー、別にそこまで酷い描写無かったじゃん、強いて言うならゴキブリみたいなのがグチャー!って―。」
「お願い、それ以上は言わないで・・・本当に食えなくなるから・・・。」

トロリとした卵が乗ったオムライスを頬張る姿は、子供そのもの。
コレだけ見ると可愛らしいのだが、言ってる事は外道そのものである。
わざわざゴキブリと口に出す辺りに悪意を感じてならない。
と言うか、その気満々、間違いなくツッコみ待ちだろう。

スパゲティミートソースを食べる手を思わず止め、青ざめた顔で哀願する風華さんの姿に、俺はそんな意図を感じた。

「あ、そういえば聞き忘れてたんだけどさ。」
「?・・・俺ですか?」
「うん。―今日は姫子ちゃんと一緒じゃないのかなって。」
「・・・あー。」
「・・・姫子ちゃんって・・・あの祭りの時に居た小さい子?」
「そそ。」

その発言から一転、至って普通な質問は、不意打ち染みている。
突然の言葉に、俺の脳裏を過ぎったのは、言うまでも無く、奴である。
そう言えば、怒らせたまま出て行ったんだっけか。

「ゲーセンには誘ったんですがね、ご機嫌斜めだったので。」
「ご機嫌斜め?」
「・・・ちょっと色々ありまして。」
「色々って?」
「・・・興味津々ですね・・・。」

口を滑らせたと言う他無い。
この人にその手(アクシデント)の話は餌の様なものである。
が、俺としては色々説明が面倒なワケで。
それとなーく『聞かないでオーラ』を出す俺。
だがしかし、結果は言うまでも無く。

「そりゃぁもう、前々から興味津々っスよー?血も繋がってない上に歳の差も二桁の二人が、同じ部屋で生活を共にしてるのは何でかなー、とかさ?」
「え。」

『聞かせろ』とでも言いたげに強請る様な声を出す空さん。
驚きの声を出したのは他でも無い、何で彼女がそれを知っているのか、と言う事なのだが。

「お兄ちゃんから色々聞いたよ~?随分と楽しい生活してんじゃん~?そこんとこも色々聞きたいなぁ?」
「・・・あー。」

この時点で、俺はそれを理解し、そして察した。

ああ、これは逃げられない。
根掘り葉掘り聞かれる状況だ、と。
怖いぐらいの笑顔を見せる彼女に、俺は思わず目を逸らさざるを得なかった。

・・・それと神埼、バイトで会ったら殴る。

「・・・その、春日井君?」
「はい?」
「二人が、同じ部屋でって・・・二人暮らしって事?」
「だよね?」
「・・・まぁ、そうっスね。」
「親御さんは?」
「・・・あー。」
「居ないよ、だって姫子ちゃん家出娘なんだし。」
「・・・そうなの?」
「・・・まぁ、ええ・・・。」
「・・・。」

予想通りとも言うだろう、何も知らない風華さんの顔は、驚きに他ならなかった。
いやまぁ、これが一般の反応と言うものではあろうが。
家出し、拾ってくれと言い寄ってくる少女を拾って、居候にした。
驚かない奴のほうがどうかしていると言うものだ。

「・・・だ、大丈夫なのそれ?・・・親御さんに連絡は?」
「えーとですね・・・それを話せば長くなるのですが。」
「うんうん、聞かせて聞かせて。」

そう、この人の様に。
なんですかその、楽しそうな顔。
他人事だからって興味津々ですか。
いやまぁ、貴女に関与されたら色々台無しになりそうだからそれでいいけども。

とは言えしかし、いかにも心配する風華さんを前に、誤魔化す様なマネはよろしくない。
もうほとんどバレている様なモンだし、話した所で問題がある訳でもない。
他言無用、と言う一応の条件を付け、俺は今までのあらすじを語った。

突然に現れた我侭娘こと姫子が、うちに来た時の事。
その原因が、父親との喧嘩にある事。
そして、その家出先を父親が理解していて、半ば公認でウチに居る事を。

風華さんの不安を解消しつつ、深くは教えない様に。
最後に少しだけ嘘を混ぜたのは、その為だ。

―・・・とは言え、本当は強ち嘘では無いのかも知れないのだが。

だって、おかしいだろう?
アイツ(姫子)が此処に着て、もう一月は経ってるんだ。
何が言いたいかは、もうお分かりだろう。



「―お父さんと喧嘩かー、もう何年前の話だろーなぁ。」
「そういう話じゃないでしょ・・・空の場合懐かしむ様な昔話じゃないし。」
「ははは・・・まぁそんなに深刻な話じゃありませんから、安心してください、当人も帰るつもりでは居るみたいですから。」
「そっか・・・良かった・・・。」

そう長くないあらすじを語り終えた後、風華さんは安堵の笑みを浮かべていた。
一度会っただけの他人を本気で心配してくれるなんて、良い人過ぎるでしょう・・・?

「でも変だよねぇ、何でコータ君の部屋に居候なんてしたんだろ、私だったら絶対女の子の部屋に行くなー、その姉妹の所とか最高じゃん?」
「・・・空・・・失礼でしょうが・・・。」

対して此方はまだまだ聞く気らしい、次々と疑問を並べていく。
シリアスなんて単語、多分この人の辞書には無いんだろう。
いや、質問自体は割と的を得てる筈なんだけどね、何だろう、このイライラは。

「それで、何でまた姫子ちゃんはご機嫌斜めなのさ。」
「・・・またグイッと話を戻しましたね・・・。」
「いや、そろそろ話したいんじゃないかと思って。」
「話を曲げたのは誰ですかね・・・。」
「ナンノコトヤラー。」

ああ、解ってはいるんだ。
こういう人だって、解っては居るんだ。
でもね、これだけは言える。

・・・この人の相手、凄く疲れます。

「まぁ、本当にちょっとした事ですよ、明日には元に戻ります。」
「えー、その原因は聞かせてくれないんだ?ならば身体に聞くしか―」
「・・・空、何でも聞くのは良くないよ、春日井君困ってるじゃない。」
「むごー!」

そんな疲労を読んでかの如く、助け舟はやってきた。
食べた後のスプーンを武器の様に持っては構える空さんの口を抑える、我らがヒーローこと風華さん。
どうやら腕力的な所では風華さんの方が上手らしい、一瞬で口をスプーンを持つ手を制された空さんは、何を言っているのか解らない。

「・・・ごめんね、色々と聞いちゃって。」
「・・・何と言うか、お互い大変ですね。」
「あはは・・・。」

出来ればもう少し早く着て欲しかった、と言いたいが、口を滑らせた立場上、ソレは言えない。
この人の性格上、あの時に空さんを止めなかったのも、姫子の事を気に掛けてだろうし。

その後はさすがに空さんも懲りたのか、それ以上聞く事はせず、代わりにと言うべきか、その鬱憤晴らしなのか、風華さんの青春時代の話に花を咲かせた。
ただでは転ばないと言うか、此処まで来ると立派ですらある。
・・・やられてる当人は迷惑以外に他ならないが。



「あー食った食った~♪」
「・・・いつもこれ位食べるんですか?」
「いや、いつもより大分抑えたつもりだけど?」
「・・・風華さん?」
「・・・はい、恥ずかしながら・・・。」

会計を済ませ、店を出た後、スレンダーだった空さんのお腹は、2倍ほど大きくなっている気がした。
ソレその筈、具体的にどの程度食べたかと言えば、オムライスに始まり、ステーキ、ミートドリア、たらこスパゲッティ、そしてデザートのチョコレートパフェの計5品。
おっと、ライス(大)二杯も合わせれば7品か。
これで大分と言うのだから、日常ではどれ程食っているのか。
神埼を殴った後にでも聞くとしよう。

「さて、これからどうするー?」
「どうするって・・・春日井君のバイトの時間もう直ぐじゃない、そろそろ解散しようよ。」
「ああ・・・もう結構時間経ったんだな。」

風華さんの言う通り、時計を見れば午後1時。
今日のバイトは2時からであり、今から戻って丁度いい時間だった。

「えー、だってまだ1時間はあるっしょ?」
「・・・空、コータ君を遅刻させる気?・・・その手を離しなさい。」
「てへ。」

満面の笑みを浮かべるその手には、俺の腕。
ああ、本気だ、本気で逃がさないつもりだった。
本当に今日風華さんが居て良かったと、心から思う俺であった。

「・・・今日はごめんね、色々と・・・。」
「いえいえ、俺も何だかんだ楽しめましたし、ありがとうございました。」
「いえいえこちらこそ・・・それじゃあまた―。」

空さんに遭ってからはどうなるかと思ったが、ようやくこれで我が家に帰れる。
風華さんの苦笑いにお辞儀で返し、後は見送られるだけ。
・・・と、なる筈だったのだが。

「―あ。」

いざ背を向けて帰ろう、と言う辺りで、空さんから声が漏れる。
それに続く様に、風華さんからも『あ』の声。
顔を見ると、まるで何か知っている顔に会った様な表情。

知り合いでも見つけたのだろうか、俺も気になってその方へ向く。

「・・・あ―。」

思わず、声が漏れた。
ああ、確かに、知り合いが居たよ。

それも、空さんや風華さんよりも、俺の方が良く知ってる奴だ。
皆様ならきっともうお分かりだろう。

「―あれ、コータだ。」
「ホントだ、ゲーセンに行ってたんじゃないの?」

そこに居たのは、同じく驚きの表情を見せる瑞希姉妹、そして―。

「・・・。」
「・・・あー。」

ご機嫌斜めと噂したばかりの、姫子さん。
どうやら未だに斜めらしい、その顔は随分と不満に溢れていた。
・・・嫌な予感しかしないぞ、おい。

第三話 続く。
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プロフィール

天野幸音

Author:天野幸音
ようこそ、野良猫の溜まり場へ。
お茶もお洒落な音楽も無いけれど、ちょっと変わった物語がここにはあります。

・・・多分?

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