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季節外れのベロペロネ

第三話『たまには素直に?』

「・・・ったく・・・どこに行ったんだか・・・あの馬鹿は・・・。」

捜索が始まってから、大体30分位だろうか。
知る場所から知らない場所に至るまで、街中を走り回っても、姫子の姿は無かった。
ゲーセンも駄目、この前桜さんと行った喫茶店も駄目、遊園地なんて入る金も多分無い(と言うか俺も無い)。
これ以上は皆目検討も付かない。

田舎とは言え町の中心部、それ相応に人と車が通り雑音が響く中、生意気なガキ一人を探すと言うのは、初めから無理な話だったのだ。

ではどうするか?と言えば、一つ。
ここは一度あのファミレスに戻るべきかも知れない。
ひょっとしたらアイツも改心して戻ってきてるかも知れないし、その時に誰もいないのでは、また逃げられかねない。
闇雲に探すよりはよっぽど良いだろう。
そう言う訳で、俺は一人来た道を戻り始めていた。

・・・こらそこ、サボりとか言うな、重要な役だろうが。
大体、嫌いだと女たらしだのと、訳の解らん因縁を付けられて金様を蹴られた俺が、その蹴ったヤロウを必死に30分、一人で、見張りも居ないのにバイトへと逃げもせず、猛ダッシュで探したんだぞ?
サボるつもりなら、最初からそのままバイトにでも行ってるって言う話だ。

・・・いやホント、何で逃げなかったのやら。
今更だが、そう思うよ。

・・・いやまぁ、何でなんてのは解ってるんですけどね。
ああ、頭の中からそんなの抜けてたんだよ。

「ああ、居た居た。」
「・・・え?」

そんな自己険悪に陥らんとしていた道中、後ろから声が掛かる。
この街中、人を呼ぶ声を聞く事なんてのは良くある事。
一瞬は『気のせいか』と思ったのだが、その聞き覚えのある声が、俺を呼んでいるのだと理解させた。

「・・・静花さん?」
「何で疑問系なのよ・・・。」
「いや、そんな格好じゃそうもなりますて。」
「・・・あー、そう言えば見るのは初めてだっけか。」
「ですよ。」

声の主は、静花さん。
黒のスーツに身を包むその姿は、仕事着で間違いないだろう、その所為で一瞬当人に見えなかったが、間違いなく彼女である。
人間、服装一つで印象が変わるなんて話を良く聞くが、本当なんだな。
普段の生活っぷりを見ているだけに、そのいかにもなOL姿は、かなりの違和感であった。
とは言え、静花さんは社会人なワケで、この格好で居る事の方が本来は多いのだろうが。

まぁ、正直そんな事はどうでもいい。
本来夜勤であるこの方が、この時間にこの姿で居る筈は無いのだが、それも今は置いておこうと思う。
何故かって、俺にとっての最もの疑問は、コレなのである。

「・・・えーと、静花さん。」
「何?」
「その背中に隠れてるのは?」
「・・・だそうだけど?」
「・・・。」

それで隠れているつもりなのか、静花さんの細い背中から顔を覗かせるのは、そう、奴。
皆で駆け回って探していた姫子が、そこに居たのだ。

瞬間、湧き上がる色々な感情。

「・・・出て来い、姫子。」
「・・・。」

この時の俺の声は、さぞシリアスだったに違いない。
言葉に応じ、静花さんの前に出る姫子の表情は、どこかおどおどとしていた。

何故静花さんと一緒に居るのか?
何故あんな事言って飛び出したのか?
何故あんな所を蹴ったのか?

聞きたい事はいくつもあった。
だが、そんな質問をする気は、ハナから無かった。

どうでも良い、と言えば嘘になる。
だが、それ以上に言うべき事があった。

「―痛ッ!?」

勿論、拳骨も忘れては居ない。
加減はしたが、いつもより強めには撃った所為だろう、頭を抑えながら、姫子はキッと此方を睨む。
が、それも一瞬。

「何すんねん!?」
「うっせぇ、これで済むなら安いだろうが、馬鹿。」
「っ・・・!」

俺の一言に、表情はコロっと変わる。
自覚は、あるらしい。

「―皆心配してたんだぞ、今でも探してるんだぞ?」
「・・・。」
「・・・ったく。」

俺も今日はバイトなんだぞ、と付け加えたくはなったが、流石にやめた。
ここで『ウチは悪くない!』とでも言う様なら考えたが、顔から察するに、悪いとは思っている様だし。
そんな小学生相手をそこまで攻める程、俺にSっ気は無い。
だからって逆でも無いが。

「・・・ごめん、なさい。」
「・・・あ?」
「だから・・・ごめん言うとる・・・。」
「・・・。」

・・・しかしながら、この謝罪は予想外であった。
普段、俺に対してだけは偉そうな態度を貫くこいつだ。
弱気な発言こそ幾つあれど、俺に対して謝るとかありえねー、とか内心思っていたワケで。
そりゃ思わず疑問符で返しもする。
だが。

「・・・コータが薄情者じゃないなんて、解ってるのに・・・。」
「・・・。」
「ウチみたいな奴を拾ってくれた奴なのに・・・桜の姉ちゃんの事、どれだけ大切に思ってるか、解ってるのに・・・。」

涙目になりながら、途切れ途切れの言葉、精一杯の謝罪。
言ってる事は良く解らないが、それが演技かどうかなど、疑う余地は無く。

「・・・ああもう、泣くな泣くな、これじゃ俺が泣かしてるみたいだろ・・・。」
「・・・。」

俺は俯いた頭を撫でながら、そんな事を口走っていた。
一方的に罵った挙句、人の股間を蹴った奴を、俺は笑って許してしまっていた。
何事も無くて良かった、とか思ってしまっていたのだ。
勿論、口には出さない、つーか出してたまるか。

「・・・ほら、皆の所に行くぞ。」
「・・・うん。」

本当、いつもこれくらい素直なら良いんだがね。
・・・まぁ、明日辺りには元通りなのだろうが。
こくりと頷き、歩き出す俺の横に着く姫子に、俺はそんな事を思った。

―・・・その後。
少し時間は掛かったが、全員がファミレスに戻り、姫子の無事を確認。

それぞれお叱りの言葉やらご心配のお言葉を頂き、解散と言う形になった。
姫子は瑞希姉妹、そしてお昼がまだだと言う静花さんとそのままファミレスの中に。
空さんと風華さんは別れを惜しみつつも、再び町の中に散策へと向かっていった。
まぁ余談として、空さんは二度目のお昼ご飯を食べる気満々だったのだが。

そして、俺は―。

・・・まぁ、考えるまでも無いだろう。
こういう時、一番酷い目に遭うのは大抵俺なのだ。




「・・・疲れた。」

言葉と共に吐かれたため息は、今月最大の深さだったであろう。
ソレもその筈、時刻は真っ暗闇の夜11時半、本来なら10時に帰れる予定だったワケで。
遅刻分の1時間半もの時間、店が閉まった後もあのハゲさま(課長)と二人きりで働かされた俺の疲労は、限界などとうに超えていた。

商品の補充、棚変えの手伝い、セールの準備・・・etc。
説教された後にこのハードワークは流石に堪えた。

腕と足は痛く、頭は重く。
眠気も相まって、気分は最悪。
徒歩15分程度の帰り道も、今日はやたらと重く感じた。

今日はさっさとメシを食って寝よう。
半額になった豪華天丼が入ったレジ袋片手に、俺は自室のドアを開けた。

「―・・・あ、おかえりコータ、おかえり~。」
「・・・・・・。」

と、同時に、目を疑った。
ああ、起きてる事はいいさ、良い子時間なんざコイツが守るとは思えないし。
問題は、こんな夜に何を『調理する(つくる)つもりなのか』のか、と言う話だ。
・・・いや、マジで。

「・・・何してんのお前・・・?」
「何って、決まってるんやろ、コータのご飯を作るんや。」

おそるおそる聞いた俺に対し、そう自信満々に答える姫子。
パジャマ姿にエプロン装備で台所の前に立ち、手にはうどん(3袋入り)、そしてこの顔。
間違いない、本気だ。
確かに遅くなるとは電話したが、ご飯を頼んだ覚えは無い、頼むわけが無い。

「・・・すいません、今日はマジで勘弁してください・・・。」
「何で!?何でいつも低調に断るん!?」

勿論、断る。
なんたって、今日の俺には豪華天丼様がいらっしゃる。
半額でも天丼は天丼、揚げ物なんて久しく食べていないだけに、楽しみにしていたのだ。
姫子の料理が胃袋に収まる隙間などありもしない。

・・・そう、思っていたのだが。

「・・・いや、やっぱ食べるわ。」
「・・・え?」

この時、俺はそう訂正を加えてしまっていた。
何故かって、気付いたからだ。

「お前の事だからうどんだろ、なら話は別だ。」
「なんやソレ・・・まぁうどんやけども・・・。」

いかにも『寝ずに待ってました』と言わんばかりの、その眠そうな顔に。
まぶたもどこか重そうである、気を抜けば閉じてしまうであろう。

それも無理も無い、時刻はもう直ぐ明日の0時。
良い子は勿論、悪い子でも寝てるだろう時間だ、眠くない筈も無く。
それでもわざわざ待っていた理由は、もはや聞くまでも無い。

「じゃあ食べる、作れるか?」
「・・・うん。」

ここで断っては、親としてよろしくない。
寝かせるべきだと考えつつも、俺は頼む事にした。

笑顔で応え、再び台所の方へ向いて調理を始める姫子。
そんな彼女を前に。

―『親として?』
俺はたった今、自分が口の中で放った言葉を、思わず繰り返していた。

・・・無意識な辺り、余計に性質が悪い。
これじゃ、否定のしようが無いじゃないか。

第三話 続く。
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プロフィール

天野幸音

Author:天野幸音
ようこそ、野良猫の溜まり場へ。
お茶もお洒落な音楽も無いけれど、ちょっと変わった物語がここにはあります。

・・・多分?

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